俳優として、たまには真面目に

「ジャン・アンリ・ファーブルの一生」大阪公演、無事に終了しました。
観にきてくださったお客様、お手伝いしてくれた方々、本当にありがとうございました。
そして、WSほんとに楽しかった。沢山の刺激や勇気をもらいました。
 今回の作品は私にとって、大変難解でした。
 大阪公演では、分解されたというか、今までの表現方法に挑戦してるというか、観客に挑戦しているというか、
ほんとに役者として、そして客観的な立場にたっても、やっぱり難しかったです。
私は、なんですけどね。。。
 ですから観に来ていただいたお客さんに、「すごく面白かった」「何が出るのかワクワクした」という感想を頂く反面、
「難しかった」「観づらかった」「わかりやすいのは駄目なの?」などいろいろな感想ももらいました。
その中でもっとも私の胸にささった観客の素直な疑問ももらいました。
「俳優はすべてをわかって舞台にたっているんですか?
演出のやりたいことに心から面白い!と思いながらやっているのか、
これ、どうなんだろう?と思いながらやっているのか、そこを知りたい」
 私はこの疑問を2名の方から投げかけられました。
口頭で聴かれたときには全然うまく答えられなくて、ほんとに自分を情けないなぁと思いました。
もう一名はメールで疑問を投げかけてくれました。
私はその疑問に答えるために初めて言葉にして、この問題を考えてみました。
 以下はその返信を一部編集したものです。長いですけど、載せてみました。

 〜省略〜
 私も多分お客さんの立場で今回の「ジャン・アンリ・ファーブルの一生」を観たらきっと、なんでこんな難しい、わからないことをするのか?と思ったと思います。私にとっても喜んで観たい作品ではないのかもしれません。
 私は俳優としては演出のやりたいことが心底わかった上で舞台に立ちたいと思うのですが、残念ながら今回はそうではなかった気がします。
実際に稽古で何度も戸惑い、「技術的に出来ない」というのではなくて、なぜこのような舞台を作りたいのか、というのがなかなか理解できませんでした。
 物語性があってわかりやすい作品だったら、演じる上でそういう「わからない」という悩みは無いのでしょうが、だからといってわかりやすい作品を演じる=面白いというのも違う気がします。
 俳優の中にも、演出の意図がわからないけど面白がってやれる人、演出の意図がわからず楽しんでやれない人、演出の意図が理解できて楽しんでやれる人、、、いろいろいるんだと思います。
 私は今は「演出の意図がわからず、戸惑いながらもやってる人」なのかなと思います。
でもやはり「演出の意図も理解して、面白がってやっている人」になりたいと思っています。
 演出家さんの中でも、俳優に意図を理解して演じてほしい人もいれば、理解できなくていいからとにかく演じてほしいという人もいたり、俳優って本当に難しいと思います。
 演出のやりたいこと、作りたい作品に少しでも近づきたいし、作品の可能性を広げたいと思うのですが、今はそれを掴むのが難しくて、正直戸惑っています。
 私は演出の意図がわかって共有できて初めて舞台に立つ楽しさを感じるタイプなのかな?とも思います。
 他の演出家さんや批評家さんが作品をみて「面白い!」と言ってくれても、観に来た多くの客さんはわけがわからず帰って行ったりします。
そのことを、作品に参加している俳優としてどう思うか。。。
 すごく短絡的な考え方なのかもしれませんが、作品作りをする団体を、一つの企業に例えるとして、作品づくりに参加している俳優は、「従業員、幹部社員、社長秘書」みたいなもので、作品は「商品」になると思います。
そこでお客さんに「この商品はどういう商品なの?」と聞かれたときに、その質問に答えられるのが社長(演出家、作家)しかいなくて、あとの社員(役者)は「なんか面白いから作ってる」「作ってますけどわかりません」と答えるとしたら、、そんな企業はないと思うし、あったらすぐに潰れてしまうと思います。
 でも、演劇を作る団体は企業ではないわけで、必ずしも役者が答えられる必要は無いんだと思うけれど、やっぱり作品だけで何かを伝えられなかったときに、それをそのまま放置するのは悲しい気がする。これは俳優としてではなくて、私が人間として寂しいと感じるのかもしれません。
〜省略〜

 
とまぁ、なんか私も混乱していて荒削りな感じがしますが、深く考えすぎなんですかね。。。作品すべての責任を負うのは私じゃない、でも、でも、でも!!!!!!と思うのです。
 今回は自分の勉強不足をいっぱい感じた公演でした。
演劇に関わっている以上、演劇に限らずいろんなジャンルの作品に触れたいと強く感じました。
「わからないもの」に立ち向かう楽しさを自分で発見できたらいいなぁと思うし、それを少しでも、感覚だけでも感じ取って、何かに答えられるようになりたいし、「わからないもの」にあきらめたくない、欲張りですが、ほんとにいっぱい考えました。
考えてみたら私には「わからないもの」なんて、ほんとこの世には、やーまーのようにあるはずです。

そんなことを考えるきっかけをくれた、沢山の感想をくださったお客さま、本当にどうもありがとうございました。